九州大学韓国研究センター『韓国研究センター年報』24号(202403)にて斎藤真理子さま(翻訳家)より『越境の在日朝鮮人作家 尹紫遠の日記が伝えること』(著:尹紫遠/宋恵媛)・『在日朝鮮人作家 尹紫遠未刊行作品選集』について、ご紹介をいただきました。
九州大学韓国研究センターキックオフシンポジウム、第2部「冷戦時代の肖像としての『密航の文学』」 というご講演のなかで、丁寧にご案内をいただいております。
「昨年出版された、尹紫遠(ユン・ジャウォン)という作家の『在日朝鮮人作家 尹紫遠未刊行作品選集』と『越境の在日朝鮮人作家尹紫遠の日記が伝えること――国境なき日々の記録から難民の時代の生をたどって』という2冊の本は、本当に貴重な本です。」
シンポジウムのなかで、このような賛辞をいただけ心から嬉しく思います。
また、ご講演のなかで「密航」について、下記のようなお話も。見事な比喩です。
実は、ある知人に、九州大学で〈密航〉の話をすると話したところ、その人が、自分のおじいさんもいわゆる〈密航〉で日本に来たのだと教えてくれました。
そして、私が〈密航〉という言葉は使いたくないんだと言いますと、その人が、自分がそれについて考えているイメージはこんなものだという喩え話をしてくれたのです。
「コップに水が入っている。その水に棒を入れてかき回したら、否応なく水は動いて動きが生じる。そしてある瞬間に棒が止まったとしても、水は相変わらず動き続ける。流れは、その瞬間には止まらないし、かき乱された流れはある程度の時間の経過の中を漂い続ける。戻ったり、また帰ったりと。〈密航〉というのは、そういうものに近いという感覚を私は持っている」。
webの記事などで早くから尹紫遠に注目しておられた、斎藤真理子さまによるご講演の記録、とても読み応えのあるものです。
尹紫遠関連の書籍を刊行する前から、斎藤真理子さまにぜひお読みいただきたいと思っておりました。
シンポジウムでのご紹介に感謝いたします。