詩誌『詩学』の世界/初期『詩学』復刻版

 

「詩壇の公器」、その全貌を本書から。

「詩壇の公器」、「新しき詩人の培養基」、「詩の研究機関」といった役割を自らに課した『詩学』は、既成詩人たちに加え、荒地派グループなど戦後詩の有力グループをまきこみながら、「詩学研究会」において谷川俊太郎、茨木のり子ら『櫂』の詩人たちなど、数々の新人を育てていった文字通り戦後詩壇の中心とも言える存在であった。
日本近代詩との接続を明確に意識しながら2007年まで約60年の道のりを歩んだ『詩学』は、創刊初期の4号を除き、現在2000年までのバックナンバーが国立国会図書館のデジタルコレクションにて公開されている。
本書は『詩学』創刊初期の4号の復刻版を、1970年までを中心に『詩学』の誌面から戦後詩の大きなモメントをすくいあげる充実の解説を付して刊行する。

 書籍概要

  • 解説:宮崎真素美〈愛知県立大学日本文化学部国語国文学科教授〉
  • 定価:本体14,000円+税 ISBN978-4-910993-63-8
  • 体裁:A5判・並装・約350頁
  • 2025年1月刊行

 目次

解説目次
1  近代詩史との接続
2  マチネ・ポエティク
3  同時代詩人評
4  詩学研究会
5  谷川俊太郎という存在
6  鮎川信夫の先見性
7  昭和三〇年の入り口
8  詩劇の流行
9 『死の灰詩集』論争
10 戦後一〇年と「詩壇の公器」
11 吉本隆明と大岡信
12 「櫂」の解散
13 H氏賞事件
14 「六〇年代」の幕開け
15 藤森安和らの登場
16 二十代、三十代、そして先達たち
17 伊達得夫の急逝と詩学社の詩書出版
18 放送詩劇
19 特集と「荒地」
20 オリンピック、そして、詩学
21 『現代詩手帖』創刊、その後

初期『詩学』復刻版
創刊号〜4号

解説者プロフィール

宮崎真素美(みやざき・ますみ)

1964年愛知県生まれ。1992年筑波大学大学院博士課程文芸言語研究科単位取得満期退学。
現在、愛知県立大学日本文化学部国語国文学科教授。博士(文学)。
主な著書に『鮎川信夫研究―精神の架橋』(日本図書センター、2002年)、『戦争のなかの詩人たち ―「荒地」のまなざし―』(学術出版会、2012年)、『鮎川信夫と戦後詩‐「非論理」の美学』(琥珀書房、2024年)などがある。

 版元から一言

戦後詩に詳しい方なら説明不要だと思いますが、戦後詩壇の公器と言われる雑誌『詩学』について、国会図書館にて未所蔵=デジタル公開されていない初期4冊を、60ページにおよぶ宮崎真素美先生の解説を付して刊行いたします。
小社の既刊『鮎川信夫と戦後詩―「非論理」の美学』【鹿ヶ谷叢書006】の企画段階で、宮崎先生による『詩学』についてまとめた論考も俎上に載せられたのですが、単著に盛り込むにはボリュームがありすぎ、なおかつ雑誌の考察だけが単著の中で浮いてしまうこともあり、別途企画した書籍になります。『詩学』前誌となる『ゆうとぴあ』がゆまに書房さんの『コレクション・戦後詩誌 第4巻』にはいっているのですが、その空白を埋める刊行にもなりますね。
2007年まで刊行をつづけた『詩学』。中々これほどのボリュームは復刻版の刊行が難しいですが、国会図書館のおかげでいつでもアクセスできる。すごい時代だなと思います。
ただ、国会図書館のHPをクリックするだけで戦後詩の大きな見取り図がつかめるかというとそれは中々ハードルが高いかと思います。

ちなみに本書は小社で初めてのガンダレ製本。まさに扉をイメージいたしました。
装丁の紙は、大和板紙さん。深みのある白地が戦後詩のイメージにつながっているかと。
本書を入口に、戦後詩に関心のある人が「戦後詩壇の公器」を紐解いていっていただければ幸いです。