伝説の出版社、金尾文淵堂の『小天地』。
近代日本出版文化形成期、関西の雄とされた総合文芸誌を、
当時の形をとどめて、全号復刻!
「本はいいものに」という矜持から、美本出版にこだわった金尾文淵堂。
出版史において、その名は不朽のものとなっている。
「営利にあらず党閥にあらず期する所は趣味の普及と理想の実現」という宣言の下、
薄田泣菫を編集長に迎え、『小天地』は、勃興期の関西出版界に新たな息吹を吹き込んだ。
多彩で充実した執筆陣と、社会から芸術に及ぶ広範で充実した内容とによって、
中央集権的文壇事情の中でも、その名を全国にとどろかした。
薄田泣菫文庫の調査研究を踏まえた研究者の解説とともに、
当時の造本を尊重し、全号を完全復刻する。
書籍概要
『小天地』1900年〜1903年
発行所:金尾文淵堂
- 解題: 荒井真理亜(相愛大学教授)
掛野剛史(埼玉学園大学教授)
庄司達也(横浜市立大学教授)
竹本寛秋(鹿児島県立短期大学准教授)
西山康一(岡山大学准教授) - 揃定価: 本体96,000円+税
- 体裁: A5判並製・全巻約5,000頁
- 推薦: 吉田昌志(昭和女子大学大学院文学研究科教授)
- 原本: 昭和女子大学・日本近代文学館・個人蔵
【訂正とお詫び】
『小天地』別冊に下記のように誤りがありました。
ご購入いただいた皆様には、大変ご迷惑をおかけいたします。
ここに深くお詫びし、訂正させていただきます。
P146
〈追記〉
結城礼一郎(甲斐一郎 掘出山人)
1-1-117 1-2-120 1-3-93 1-4-161 1-5-121
P148
〈誤〉掘出山人 →松崎天民
〈正〉掘出山人 →結城礼一郎
〈誤〉
松崎天民(松崎市郎 天民情仙 掘出山人)
1-1-79 1-2-70,120 1-7-102…
〈正〉
松崎天民(松崎市郎 天民情仙)
1-1-79 1-2-70 1-7-102…
P156
〈誤〉甲斐一郎 〈正〉結城礼一郎
配本表
第一回配本 | 第二回配本 | |
---|---|---|
内容 | 全15冊 第1巻1号〜第2巻5号 (各巻約160〜250頁) |
全10冊 第2巻6号〜第3巻1号 (各巻約250〜320頁) 別冊 (解説・総目次・執筆者索引) 約150頁を予定 |
刊行時期 | 2022年1月刊行 | 2022年11月刊行 |
価格 | 本体48,000円+税 | 本体48,000円+税 |
ISBN | 978-4-910723-00-6 | 978-4-910723-16-7 |
推薦
よみがえる『小天地』の宇宙
石川啄木が地元岩手で発刊、一号のみで終った雑誌と同名であることから、しばしば混同された『小天地』は、その五年前、大阪の金尾文淵堂が十九世紀最後の年(一九〇〇・明治三三年)より、日露開戦の前年(一九〇三・明治三六年)まで、足かけ四年にわたって発行した関西文壇の雄たる文芸雑誌である。
私にとっての「小天地」は、泉鏡花の「政談十二社」や「木精」(「三尺角」後編)の掲載誌として逸すべからざるものだったが、初めて原本に接したのは勤務先の近代文庫の書庫だった。その揃いの二十五冊を繰り展げる自分の周りには、明治の文芸界の宇宙が、たちどころに現前した。
一号ずつを、本欄の巻頭小説から始めて、巻末の彙報、広告、奥附まで、誌面のすみずみに、くまなく目を通せば、編輯主幹薄田泣菫の才覚が如実に感得できるのはむろんのこと、国木田独歩(「牛肉と馬鈴薯」)や島崎藤村(「爺」)の詩人から小説家への転身の歩みを印しているのが確認できたし、雑録・社会欄における松崎天民の闊達な探訪記事も、文芸に偏らずに雑誌の懐を寛げていた。頁数こそ少ないが、各欄にわたる内容の充溢は、東都の春陽堂『新小説』におさおさ劣るものではない。ひとり鏡花のみならず、明治三十年代の文学の担い手が一堂に会している感を深くする。
このたび琥珀書房から、私の通覧した近代文庫の蔵本をもとに『小天地』が蘇活するという。電子画面に明滅する文字ではなく、確と刻まれた活字の躍動を一人でも多くのかたがたに満喫していただきたいと願うや切である。
― 吉田昌志(昭和女子大学大学院文学研究科教授)
主要執筆陣
<あ>青木月斗/赤木格堂/青柳有美/赤堀花陰/赤松麟作/秋月桂太郞/芦田秋窓/有本次郎/安藤橡面坊/井垣増太郎/生田葵山/石井露月/泉鏡花/泉斜汀/磯萍水/伊藤左千夫/稲村真里/伊原青々園/岩野泡鳴/内田茜江/内海信之/梅沢墨水/江上朝霞/大石霧山/大谷繞石/大槻月啼/大西伯寒/大矢正修/岡秋浦/小栗風葉/落合直文<か>角田浩々歌客/加藤紫秋/加藤眠柳/金尾種次郎/金子薫園/神谷仙華/神谷鶴伴/河井酔茗/河合武雄/川上桜翠/川上音次郎/片上天絃/川上眉山/河田芳水/河東碧梧桐/蒲原有明/菊池幽芳/木崎好尚/岸本柳子/喜多村緑郎/木村周平/草村北星/国木田独歩/窪田通治/桑田春風/幸田成友/幸田露伴/小杉天外/児玉花外/児玉星人/小塚空谷/後藤宙外/小宮水心<さ>齋藤溪舟/齋藤紫軒/齋藤弔花/小織桂一郎/阪田耕雪/佐々木信綱/佐藤紅緑/佐野天声/澤村胡夷/柴田流星/島崎藤村/島村抱月/杉谷代水/薄田泣菫/数藤五城/水落露石/関根黙庵/相馬御風<た>高須梅渓/高瀬晩翠/高浜虚子/高安月郊/田口掬汀/竹内春水/竹村秋竹/橘御風/辰馬伯洲/田中美風/田中夢虹/田村松魚/田山花袋/土屋龍鳳/綱島梁川/坪内逍遥/富本長洲/富樫柳水/徳田秋声/徳富蘇峰/徳富蘆花<な>内藤湖南/長井金風/中井浩水/永井荷風/中島孤島/渚松閑人/内藤鳴雪/中川四明/中村春雨/西田廻瀾/西田巴子/西村酔夢/西村渚山/西山筑浜/新田靜湾/丹羽黙仙/沼波瓊音/野口雨情/野口寧齋/野田別天楼<は>長谷川濤涯/花房柳外/原霞外/平尾不孤/広津柳浪/福田把栗/藤井紫明/藤田安良/堀内新泉<ま>正宗白鳥/松崎天民/松下紫人/松瀬青々/松村鬼史/三木天遊/三島霜川/水谷不倒/満谷国四郎/宮本此君庵/向井藻浦/森田義郎<や>安江秋水/柳川春葉/矢橋夕星/山川登美子/山下雨花/山下破鏡/山田泰雲/山中北渚/山本郭外/山本露葉/湯浅半月/結城(甲斐)禮一郎/横井時雄/横瀬夜雨/与謝野晶子/与謝野鉄幹/吉野臥城/米光関月<ら>羅蘇山人<わ>若柳燕嬢/和田英作/渡辺香墨
版元から一言
明治関西文化雑誌の代表格である『小天地』、創刊時、金尾種次郎はなんと弱冠21歳。
関西の文化人、新聞人たちと盛り上がりながら、1冊1冊、活版や木版、写真付録などをつけていたかと思うと、その若き情熱に感じ入りました。
デジタルでしか本をつくったことがない私には、正直想像を絶する世界です。
復刻版では、解題の先生たちのご尽力で散逸している口絵付録なども口絵で収録しています。
私製はがきが許可されて間もない時代、付録のハガキから、明治の人たちのロマンも感じていただけるのではないかと思います。