日本の人形芝居をより立体的に理解するために
文楽を中心に、近代の人形芝居と人形操りについて、国を越えた多角的アプローチで迫る論集。
三人遣い、乙女文楽、八王子車人形と現代人形劇、日本とドイツの人形劇との関わりなど、伝統的人形操りについて多様に論じられる。
第一部「演技と表現」、第二部「媒体と場」、第三部「創作と伝承」、第四部「伝統と近代」の四部構成。
ややもすれば「伝統芸能」と固定化した視点で語られがちな日本の人形芝居の世界をとらえかえす、海外を含め多彩な著者が集う意欲的な論集。
書籍概要
- 編集:細田明宏(帝京大学)
- 定価:本体7,200円+税 ISBN978-4-911589-33-5
- 体裁:A5判・並製カバー装・336頁
- 装幀:野田和浩
- 2026年7月発売
目次
はじめに (細田明宏)
第一部 演技と表現
第一章 現行文楽における人形遣いの演技と表現(後藤静夫)
第二章 文楽人形うしろぶり考 女方人形の愁嘆表現にみる動作の特異性(中野ふくね)
第三章 からくりと能(三) 竹田からくり「武功乱曲扇」を中心に(山田和人)
第二部 媒体と場
第四章 乙女文楽人形のマテリアリティと人形遣い・人形の関係性 稽古の様子から人形の「不具合」まで(ゴロウィナ・クセーニヤ)
第五章 現行文楽における人形首の選定(首割り)と変更(後藤静夫)
第六章 観客にとって、文楽人形の顔はどれほど人間に近いか 心理学的アプローチから考える (大江朋子、細田明宏:共著)
第七章 道頓堀の人形浄瑠璃興行に関する覚え書き 竹本座と金毘羅大芝居のことなど(久堀裕朗)
(コラム)三人遣いと民主主義 「ブンラク」の国際的展開(山口遥子)
第三部 創作と伝承
第八章 八王子車人形と現代人形劇による『シャンクス・メア』―日米の人形芝居アーティストによる文化を超えた創作と上演 (クラウディア・オレンスティン、:翻訳、細田明宏)
第九章 近代日本における民俗的(ヴァナキュラー)な人形芝居の出現と展開―「人形的身体」から考える(薗田郁)
第十章 大学教育における文楽人形劇 少子化の荒波の中で(片山剛)
第四部 伝統と近代
第十一章 西川伊三郎の代々(澤井万七美)
第十二章 日本の「人形劇」誕生前夜―ドイツの芸術的人形劇との関わりを中心に
(山口遥子)
第十三章 近代の東京における「女人形遣い」―女性による人形浄瑠璃の興行(細田明宏)
著者プロフィール
細田明宏(ほそだ あきひろ)
人形浄瑠璃研究。
2001年京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(人間・環境学)。現在、帝京大学教授。
〔著書・論文〕
『近代芸能文化史における『壺坂霊験記』―生人形から浄瑠璃、そして歌舞伎・講談・浪花節へ』(ひつじ書房、2020年)、「SPレコードおよび新聞ラジオ面における浪花節の詞章」(真鍋昌賢編『浪花節の生成と展開』、せりか書房、2020年)。
版元から一言
小社刊行の『人形浄瑠璃文楽における伝承と現在 制作者の視座から』(著:後藤静夫)の編集にて大変お世話になりました細田先生が、人形芝居の研究をもりあげるべくまとめられたのが本書になります。
本書「はじめに」にありますように、「伝統芸能」とカテゴライズされた途端に、不変のものであるかのようにとらえがちになりますが、本書を読むと、いかに変化し、多様な観方があるかを感じさせられます。
「乙女文楽」や「顔認知心理学」からのアプローチもおもしろく、少子化の大学教育のなかで文楽人形劇をとらえた論考も非常におもしろいのですが、ここでは編者の細田先生の論考から。
近代の、しかも東京における「女人形遣い」について、近代メディアに残されたその足跡と興行記録から、東京の寄席興行で得た経験を生かして世を渡る女人形遣いの姿が浮かんでまいります。
「伝統芸能」とかまえがちなわれわれの認識を問う、このような共著論集が出版でき嬉しく思います。
人形芝居の研究が、これからより盛んになっていくことを版元として応援していきたいと思います。
PS
本書のタイトルのもととなった、下北沢国際人形劇祭のことも、追記いたします。
人形劇を中心とした舞台芸術の国際的交流を後押しし、日本と世界の人形劇芸術発展を促進するために設立された非営利活動法人Deku Art Forumが中心となって運営されている人形劇祭です。
本書で12章とコラムを詩筆いただいた山口遥子さまが中心に活動されています。
2026年2月に開催された第2回下北沢国際人形劇祭にて、下記のようなイベントを企画していただき、本書の一つの骨子となっています。
「日本の人形芝居をどうとらえるか/ New Perspectives on Traditional Japanese Puppetry」
下北沢の一角で繰り広げられる様々な人形劇。
ぜひとも、次回以降の開催に参加いただければ幸いです。

