【鹿ヶ谷叢書008】
占領下の痕跡(スクラップ) 一九五〇年代沖縄の社会と景観

「鉄の暴風」から数年。基地建設によって変容していく沖縄の社会と景観の記録には、無数の傷跡が刻まれている。

一九四五年夏以降、農村経済の崩壊した沖縄では生きるため多くの人々が新たな生活手段を求めて移動し、生きるために苦闘をつづけた。

・戦後日本の高度経済成長を支えた数々のゼネコンの隆盛の源流には、米軍統治下沖縄の基地建設工事があり、その現場を考察する。
・今回初めて書籍収録される、嘉手納基地内の空間改変プロセスが明らかになる写真の数々。
・「銃剣とブルドーザー」がもたらした土地接収による、街と人々への影響。
・「島ぐるみ闘争」で熱を帯びる住民大会の様子をとらえた写真の数々から分析される、その「決議文」の地理的範囲。
・沖縄戦後史を象徴するような「スクラップ・ブーム」の実態とその空間的広がり、そしてブームに翻弄された地域の変容。
・米軍の全面占領のもと、特異な都市形成を遂げた那覇の街路名の生成。etc

資料制限の厳しい1950年代沖縄において、数々の貴重な写真資料や地理・文献資料をもとに、傷だらけの「戦後」沖縄が浮かびあがる。
人文地理学の可能性を問う入魂の一冊!

 書籍概要

  • 編著:加藤政洋・河角直美・前田一馬・恩河尚
  • 予価:本体2,800円+税 ISBN978-4-911589-17-5
  • 体裁:A5判・並製カバー装・約352頁
  • 装幀:野田和浩 
  • 2026年1月刊行

 目次

序章  沖縄の一九五〇年代
第1章 恒久基地の建設と本土業者
第2章 写真特集 家族住宅の建設風景
第3章 伊佐浜の強制立ち退きと《インヌミ》
第4章 写真資料にみる「島ぐるみ」の団結
第5章 スクラップ・ブーム
第6章 那覇―街路名と〈場所の記憶〉
第7章 馬天 ―港まちの記憶
第8章 南大東島「在所」―〈孤島〉の中心市街地
第9章 コザ ―高低差から基地都市の〈地景〉(ランドスケープ)を読む
終章  景観復原と地図・古写真の活用

 著者プロフィール

加藤政洋(かとう・まさひろ)

1972年長野県生まれ。大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程修了、博士(文学)。現在、立命館大学文学部教員。専門は人文地理学。おもな著書に、『那覇―戦後の都市復興と歓楽街』(フォレスト、2011年)、『大阪 都市の記憶を掘り起こす』(ちくま新書、2019年)などがある。本書では第1~6章、第8章、終章を担当した。

河角直美(かわすみ・なおみ)

1976年大阪府生まれ。立命館大学大学院文学研究科後期博士課程修了、博士(文学)。現在、立命館大学文学部教員。専門は人文地理学。おもな著書に『おいしい京都学 料理屋文化の歴史地理』(ミネルヴァ書房、2022年、加藤政洋との共著)などがある。本書では第1~8章と終章を担当した。

前田一馬(まえだ・かずま)

1990年長野県生まれ。立命館大学大学院文学研究科後期博士課程修了、博士(文学)。現在、京都橘大学経済学部教員。専門は人文地理学。おもな著書に『京都食堂探究』(ちくま文庫、2023年、加藤政洋・河角直美らとの共著)などがある。本書では第1~5章、第8・9章、終章を担当した。

恩河尚(おんが・たかし)

1953年美里村(現・沖縄市)生まれ。1979年琉球大学法文学部卒業。現在、沖縄市総務課市史編集担当(会計年度任用職員)。おもな論文に、「コザの時代を考える」(『KOZA BUNKA BOX』創刊号、1998年)、「戦後沖縄における引き揚げの歴史的背景とその意義」(『東アジア近代史』第10号、2007年)、「収容所」(沖縄県教育庁文化財課史料編集班編『沖縄県史 各論編 第六巻 沖縄戦』沖縄県教育委員会、2017年)などがある。本書では序章を担当した。

 版元から一言

いよいよ9/19に公開の映画『宝島』にあわせ、告知を開始させていただきました。
映画は未見になりますが、原作でも言及されている、「戦後」沖縄を象徴する「スクラップ・ブーム」についてなど、「鉄の暴風」と言われた壮絶な沖縄地上戦の傷跡と、現代にも継続する米軍基地の建設の記録など、1950年代沖縄を考える全9章を、映画や原作をお読みになった多くの方に、本書をお読みいただければと願っております。

追記
早めに刊行予告をさせていただきました本書、ようやく刊行の運びとなりました。
50年代の嘉手納基地内の家族住宅建設の記録写真群など、貴重な写真資料を収録したうえで、那覇だけでなく、コザをはじめ沖縄各地の景観について論じられています。

はじめて、人文地理のお仕事に携わらせていただきながら、景観と地形図を眺め、そして多くの図版と言葉にこめられる編著者の皆さまの思いを感じました。

「スクラップ・ブーム」はじめ、いずれも読み応えのある章ではございますが、『プライス勧告』への広範な反対運動、いわゆる「島ぐるみ闘争」について論じた4章をここではご紹介したいと思います。
反対演説する若き女学生を正面に据える写真、ジグザグ行進をする琉大生の群像写真、演者の足元にうつるカンパ箱などなど。
古写真のなかに残る9枚の写真と当時の新聞記事から、まさに各地の反対集会の様子が視覚的に復元されていくかのように感じます。
現在まで続く基地に対して、沖縄に住まう人々の声、その一つの大きな原点でもある1956年の運動の息吹を、感じていただけるのではないでしょうか。

どこもかしこも軍拡の昨今のご時世。
辺野古の基地建設現場を眺めると、軍事のために海を埋め立てる国家というものが現前することを考えざるをえません。
この80年、そうした力に圧倒的にさらされてきた沖縄の歩み。
その根源とも言える地上戦と占領・基地開発というあまりに大きな「傷み」を考えるうえでも、本書は新たな視点を提供してくれるはずです。

さて、映画「宝島」の話にもどります。
妻夫木さんはじめ演者さんたちの心に響くセリフももちろんですが、映画の美術の方々のお仕事でしょうか、
1950年代の沖縄を再現されようとした方々の地の滲むようなお仕事の数々もスクリーンから感じました。
本書も映画に負けないように、装幀の野田さんと相談しながら、占領の暗い時代でも輝くものを造本にこめられたかと思っております。

沖縄に関心のある人、訪れたことがある人、これから訪れる人、そうした多くの方に手にとっていただきたい本書。
ぜひ、お読みいただければ幸いです。

追記2
コザにあります、沖縄市戦後文化資料展示館ヒストリートは、本当におすすめなので、コザに行かれる皆さまは、ぜひお立ち寄りを!

追記3
大事なことを記載し忘れていました。本書について私の間接的な一つのきっかけとなった、立命館大学平和ミュージアムの下記企画展にも感謝を。
2024年度秋季展覧会「阿波根昌鴻 写真と抵抗、そして島の人々
いつか、伊江島にも参れればと願っております。
平和資料館「ヌチドゥタカラの家」