【復刻版】文化組織

 

戦後文化の一大源流となった「文化再出発の会」、戦中の営みの全容が蘇る

「白紙にかへって、民族の生活の根たるべき文化を批判検討し、そこからあらゆる運動への、時代の動向への関連を持たせたいと思う」という方針のもと花田清輝・中野秀人を中心に結成された「文化再出発の会」。
岡本潤・小野十三郎などアナキストを中心に、「外地」をふくむ多士済々の人物をまきこみ、弾圧の時代の中、同人誌の風を装いながら、一種の総合雑誌として戦中3年にわたり刊行をつづけた「文化再出発の会」の機関誌『文化組織』。
昭和10年代を代表する文化誌でありながら、これまで全号を通覧できる機関はなかった。
『真善美』、『綜合文化』という戦後文化誕生の源流となった戦中の営みが全号当時の姿で蘇る。

 書籍概要

『文化組織』復刻版 1940年1月〜1943年10月 全42号
発行:文化再出発の会

  • 解題: 村田裕和(北海道教育大学)・尾崎名津子(立教大学)・加藤大生(同志社大学)
  • 推薦:鳥羽耕史(早稲田大学)
  • 揃定価: 本体180,000円+税
  • ISBNセットコード:978-4-910993-25-6(第1回配本)
  • 体裁: B5・A5判並製、全42冊+別冊、総約3,100頁
     (別冊にて、解題・総目次・執筆者索引を付す)
  • 原本: 同志社大学図書館、日本近代文学館、神奈川近代文学館、国立国会図書館

 配本表

第一回配本 第二回配本 第三回配本
内容 全16冊
第1巻1号~第2巻4号
全12冊
第2巻5号〜第3巻4号
全14冊
別冊
(解題・総目次・執筆者索引)
刊行時期 2023年11月刊行 2024年10月刊行 2025年4月刊行
価格 本体60,000円+税 本体60,000円+税 本体60,000円+税
ISBN 978-4-910993-25-6 978-4-910993-26-3 978-4-910993-27-0

(※第1巻第5号 pp.27-32 類似の諸形態(中野秀人) が現存する確認できた唯一の原誌から脱落しております。現状、こちらは提供できず。刊行後ももし発見できましたら、第1巻第5号については、改訂版もしくは記事のオンライン公開を予定しております。)

 推薦文より

今回の復刻版と、先に復刻された『綜合文化』(不二出版)を併せ読むことにより、戦後の前衛文学・芸術を準備した雑誌であるとともに、戦争に協力した雑誌でもあるという、『文化組織』の複雑な性格が理解できるようになる。
戦時下、そして戦後の文学・文化を研究するのに重要な資料となるだろう。
― 鳥羽耕史(早稲田大学文学学術院教授)

 主要執筆者

赤木健介・秋本義勝・秋山清・池田克己・内田巌・内山完造・岡本潤・小野十三郎・金子光晴・北川冬彦・倉橋顕吉・小泉譲・佐川英三・柴田錬三郎・島崎曙海・新居格・関根弘・高祖保・田木繁・竹田敏行・竹中祐太郎・千葉正平・壺井繁治・永瀬清子・中谷博・中野秀人・野口米次郎・花田清輝・原田勇・深尾須磨子・堀田昇一・松田解子・宮崎譲・村野四郎・村松正俊・薮田義雄・吉田一穂

 版元から一言

「この會合は政治運動及び政治運動の一部分を目標とするものではありません。
むしろ白紙にかへつて、民族の生活の根たるべき文化を批判検討し、そこからあらゆる運動への、時代の動向への関聯を持たせたいと思ふのであります。
こゝでは、文化は自主的であり、科學的追及に堪へるものであり、それだけを對象としてもそれだけを切離しても、尚且つ當面の重大問題たるべき種類のものでなくてはなりません。」(「文化再出発の会について」)

一九四〇年に創刊されたメディアの意気込みを伝える言葉として、何とも意味深で独特な言葉をかかげる『文化組織』。
創刊当初は目次だけのシンプルな装いです。号を重ねるごとに不思議なモチーフの装画をかかげながら、戦中約四年にわたって刊行をつづけた文化誌になります。

戦争協力に共鳴する言葉を冒頭と末尾に飾りながら、その合間に、創作や詩、評論の他、地方文化ルポや、「原子論史」「原住民の手記」といった翻訳ものが挟まっているという不思議な目次。
編集の中心となった花田清輝や中野秀人という二人を軸に、アナキスト文学、『上海文学』、『満洲詩人』同人といった「外地」の文化人の名が連なる本誌、戦前―戦後の連続性を考えさせる資料として、私自身も楽しみに刊行準備をしております。

全号通覧できる機関はなく、残された所蔵号を撮影させていただき、このたび全号を復刻できました。
(※第1巻第5号 pp.27-32 類似の諸形態(中野秀人) が現存する確認できた唯一の原誌から脱落しております。現状、こちらは提供できず。刊行後ももし発見できましたら、第1巻第5号については、改訂版もしくは記事のオンライン公開を予定しております。)

広くご活用いただければと願っておりますので、ぜひご所蔵のうえ図書館にてご覧くださいませ。
関連書籍については、今後刊行のアナウンスをする予定です。そちらもどうぞお楽しみに。