【復刻版】東亜文化圏

 

「大東亜共栄圏」の文化研究雑誌。
対象地域はアジア全域、特に従来資料に乏しかった東南アジアの豊富な情報がここに!

一九四二年初頭に創刊された対外文化研究雑誌『東亜文化圏』。
「対外文化陣営の構築、整備と、文化政策の統一的確立」することを目指した本誌は、
占領地において実際に対外文化政策を担っていた実務家を結集。
その対象とする表現領域は広く宗教・音楽・映画・写真・国語・文芸に及んだ。
動員された学知は、地政学はもちろん、新聞学・宣伝学・民族学も含まれ、様々な分野において報告が交換された。
広範な「大東亜共栄圏」の占領地文化政策の実態を、データと写真、文章で伝える本誌は、
文化政策を、日本から「大東亜」の枠組みへ作り直そうと試みた戦中の文化を今に伝える。

 書籍概要

『東亜文化圏』復刻版 1942年2月〜1945年2月 全37号
発行所:青年文化協会東亜文化圏社

  • 解題: 和田敦彦(早稲田大学教授)
  • 揃定価: 本体180,000円+税
  • 体裁: A5判並製、全37冊+付録2冊+別冊、総約4,000頁
  • 原本: 早稲田大学図書館、京都大学人文科学研究所図書館、一橋大学図書館

 配本表

第一回配本 第二回配本
内容 全17冊
第1巻1号〜第2巻6号
全20冊
第2巻7号〜第4巻2号
付録2冊
(青年文化協会事業報告1・2集)
別冊
(解題・総目次・執筆者索引)
刊行時期 2022年11月刊行 2023年11月刊行
価格 本体90,000円+税 本体90,000円+税
ISBN 978-4-910723-38-9 978-4-910723-39-6

刊行の辞

『東亜文化圏』は東亜文化圏の会によって1942年2月から1945年2月まで刊行された。
会の母体である青年文化協会は、日本語教育や外国人留学生の受け入れを東南アジア地域に重心をおいて行っていた民間の組織である。
『東亜文化圏』の目的は、日本の対外文化工作の組織や機能を具体的に検討し、確立していくことにあった。
日本語教育や映画や出版物を通した日本文化の発信、浸透の方策や実践がそこでは問題となる。
そしてそれを一国の言語、文化ではなく、「大東亜共栄圏」の言語、文化として押し広げていくための方策に、この雑誌の関心は向けられている。
「大東亜共栄圏」内における文化戦、思想戦の方法やその実践を扱う専門誌と言ったらよいだろうか。
実際に各地で文化戦、思想戦を展開していくには、現地での教育やメディア産業に関わる民間のアクターが不可欠である。
そしてまた現地の教育、文化状況の正確な情報もまた必要である。この雑誌から見えてくるのは、こうした文化宣伝に具体的に必要とされた情報や、その実践を実際に担った人々の活動である。
戦局の変化に伴って日本の占領地で実際に文化工作にあたった人々からの実践報告も寄せられていく。
現地の文化工作の実態とともに、政府の対外文化政策との間のずれや齟齬がうかがえるところも、この資料の価値の重要な一面をなしていよう。
― 和田敦彦(早稲田大学教授)

 主要執筆者

浅野晃/飯島正/伊地知進/内田吐夢/大岩誠/大鹿卓/大川周明/尾崎士郎/梶原勝三郎/糟谷賢三郎/窪田雅章/久野芳隆/小牧実繁/鈴木善一/並河亮/藤田徳太郎/枡源次郎/三吉朋十/室賀信夫/保田與重郎

 版元から一言

まさに「大東亜共栄圏」とは何を目指していたのかを考えさせられる文化政策雑誌だと思います。
ほとんど空白ともいえる「大東亜」の文化の内実を、なんとかうめていこうとするような戦中の営み。
(「東亜文化圏」は、共通点としてあるよりも、むしろただ可能圏としてある」という言葉が本誌の中にあります。)
官僚や研究者の記事の他に、亜細亜主義者たちの文章や記事が目に付きます。
西洋諸国による支配からアジア諸国を解放しようとした彼らの志や理念はこんな形で帰着したのかと、
ありきたりながら思わず考えてしまいました。
その他には、プロパガンダのお手本のような写真を、若い人たちにも見て欲しいなと思いました。
和田先生のおっしゃるとおり、ここにしかない占領地のデータも散見されます。

もっと昔に復刻されていてもおかしくないような雑誌をこのたび刊行することができ、和田先生に感謝です!
戦中の文化研究の基礎資料として、多くの図書館に所蔵して頂ければ幸いです。

和田先生による近年の「大東亜」と文化についてのご研究が、下記にまとめられています。
ひつじ書房 未発選書 30
『「大東亜」の読書編成 思想戦と日本語書物の流通』