【鹿ヶ谷叢書001】
広島 抗いの詩学 ―原爆文学と戦後文化運動―

 

広島×戦後文化運動
東アジア冷戦に抗う言葉の軌跡を想起する

 書籍概要

  • 著:川口隆行 〈広島大学大学院人間社会科学研究科 教授〉
  • 定価:本体4,500円+税 ISBN978-4-910723-27-3
  • 体裁:A5判上製・約300頁
  • 2022年3月刊行

 目次

はじめに
第Ⅰ部 サークル運動論
一. 『われらの詩』における詩作品 ―その詩学と政治学― 
二. 『われらの詩』から『われらのうた』へ
    ―被爆地広島のサークル詩誌の軌跡―
三. 動物たちの原爆文学 ―『原爆詩集』試論― 
四. 四國五郎と辻詩
    ―シベリア収容所の民主運動と被爆地広島のサークル運動―
五. 『ヂンダレ』と『琉大文学』にみる広島・長崎・ビキニ
    ―東アジア冷戦の狭間から―
第Ⅱ部 復興批判論
六. 朝鮮戦争と民衆の自画像 ―山代巴「或るとむらい」論―
七. 「声」を拾い集め、編み直す
    ―被爆者支援運動と手記集『原爆に生きて』―
八. カタストロフィと日常の交差
    ―田中清子の手記(『原爆の子』)を読む―
九. 復興する街を書き直す ―大田洋子『夕凪の街と人と』論―
おわりに
あとがき 
索引

 著者プロフィール

川口隆行(かわぐち・たかゆき)

1971年生まれ。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了。大葉大学(台湾)講師、東海大学(台湾)助理教授、広島大学大学院教育学研究科准教授を経て、2020年より広島大学大学院人間社会科学研究科教授。専攻は日本近現代文学・文化史。著書に『原爆文学という問題領域(プロブレマティーク)』(創言社、2008年。増補版2011年)、『台湾・韓国・沖縄で日本語は何をしたのか――言語支配のもたらすもの』(共編著、三元社、2007年)、『戦争を〈読む〉』(共編著、ひつじ書房、2013年)、『「サークルの時代」を読む――戦後文化運動研究への招待』(共編著、影書房、2016年)、『〈原爆〉を読む文化事典』(編著、青弓社、2017年)などがある。

 版元から一言

1950年代の広島における表現と運動について、この10年における著者の研究をまとめた本です。
近年積み重ねられた戦後文化運動の研究が、広島に結実した感を抱きました。
人文学研究とは様々な声や研究との対話なのだと、編集のなかで実感させていただきました。
個人的には戦前戦中より想像のつきにくい、1950年代という時代。
しかしながら、著者の取り上げたテクストからは、現代にこそ響くメッセージが確実に届けられます。
私は広島にも特に縁がなく、1950年代についても勉強中の人間ですが、そうした人にこそ一読いただきたい内容となっています。
特に8章、田中清子のテクストは、市井の人の原爆体験をあつかっており、予備知識なしに、原爆体験とその表現について考えさせられる内容となっておりますので、ぜひ手にとっていただければ嬉しいです。